大坪善一（生年不詳~安政2年）は飛騨高山の生まれ、名は東平、藤平衛。国府村宮地の傳十郎方へ婿養子に入って善一と改めた。恵比寿大黒を得意とする佛師で神社随神を含め3500体を数える多作家であった。作品には番号と「飛州高山大佛師大坪東平善一花押」と自署した。米粒に和泉式部大江山の歌を書いたり、頭髪を８筋に割くなど細かい細工ができた。酒豪で五升余を平らげた逸話が残る。享年７６歳。
　大坪周右衛門（嘉永６年〜明治38年）は東平の子。神社随神像を多く残した。作品には「大佛師大坪秀右衛門」と記した。享年67歳。長女「ふさ」も仏師の職を受け継いで多くの作品を残した。