戦争文書があります。対ロシア戦ではこんな唄を
作っていたのですねえ。対米英戦では立場が逆に
なったんですから歴史とは怖いものです。しかし、
行間には兵士の悲哀が、そして本音が籠もっております。
それにしても一般に流布していたのでしょうか?
作った人も、書いた人も分かっておりません。

「明治37年 征 露 乃 露 草 2月吉日」


露 國 進 軍 歌
其の壱
進めや進めいざ進め
もしや敵に出会いなば
進むは國のためならず
心得違いのないように
敵に会うまで進むべし
何はともあれ逃げるべし
猶更おのれのためでなし
逃げるつもりで進むべし
其の二
進めや進めいざ進め
死んでは引合うものでなし
逃げるは我等の権利なり
死なぬ覚悟で進むべし
  わずかの給料貰う為め
進むは我等の義務なれど
命の二つなき者は
其の三
進めや進めいざ進め
途には婦女を辱め
こんな機会に暴れずば
軍規もヘチマもあるものか 
  乱暴する気で進むべし
他人の宝を奪い取れ
またと暴れる機会はなし
無暗に暴れて進むべし
其の四
進めや進めいざ進め
強い敵兵前にあり
刀はピカピカ輝きて
腰を抜かさぬその内に 
  うしろを向いて進むべし
怖い大砲横にあり
弾丸はピユーピユー飛んで来る
後方を向いて進むべし
其の五
進めや進めいざ進め
なるだけ道を迂回して
たとひ我等は弱くとも
スラブ頭を振り立てて 
  敵の居ぬ地に進むべし
方角違いに進むべし
敵に遇わねば負けはせぬ
威張り返って進むべし

露 國 退 軍 歌
其の壱
逃げよ逃げ逃げ皆逃げよ
日本は素敵に強い國
強いと弱いが戦えば
命取られちゃ堪らない
恥外聞もあるものか
スタコラヨイヤサと逃げ出せよ
此方はベラボに弱い國
どうせ弱いが負けなるぞ
命あっての物種ぞ
早く負くべし逃げるべし
其の二
逃げよ逃げ逃げ皆逃げよ
たとひ弱いと言われよが
ヤボンスキには叶わない
もしも命のない時は
鉄砲で打たれぬ其の内は
  スタコラヨイヤサと逃げ出せよ
腰抜け兵士と笑われよが
首を切られちゃ命なし
何の楽しみ有るべきや
人に構わず逃げるべし
其の三
逃げよ逃げ逃げ皆逃げよ
もと我々が出て来たは
ホンの些細な日当で
國のためとは何の事
今更言うてもダメなれば
  スタコラヨイヤサと逃げ出せよ
いのちを捨てる為ならず
言わば人足同様ぞ
それじゃ約束違いなり
何でも構わず逃げるべし
其の四
逃げよ逃げ逃げ皆逃げよ
給金渡らず銭はなし
おまけに前は敵なるぞ
こんな馬鹿げた事はなし
どこの何兵衛に義理やある
  スタコラヨイヤサと逃げ出せよ
物をも食わず腹空けり
ウカウカして居ちゃ首がない
こんな詰まらぬ事はなし
命のある中逃げるべし
其の五
逃げよ逃げ逃げ皆逃げよ
我はロスキー先方は
殊に鉄砲は上手なり
とても我等のやせうでで
苦しい思いをせぬ中に
  スタコラヨイヤサと逃げ出せよ
天下晴れての御人様
殊に刀は切れるなり
ヤボンに勝てやう筈はなし
逸足はやく逃げるべし

勇 士 作 歌
時惟二月の第九日
星の光りを辿り行く
中にも第一駆逐隊
目指すは敵の旅順口
彼処や其処の哨艇も
体は微塵に砕くとも
打沈めずば帰らじと
おぼろ気ながら星影に
探海燈を振り廻し
又他に移す其の隙に
進んで打出す白雲号
周章打出す砲声も
此ぞ此処なり是なりと
天地も震ふ響きして
見る見る中に水煙り
乗組士卒手を挙げて
勝鬨高く跡にして
是ぞ戦ひ始めなる
光りと共に輝かん

月まだ出でぬ闇の空
十有の水雷駆逐艦
其の名の如く真っ先に
たとひ堅固の防材や
何か恐れん日本武士
遺恨重なる露西亜鑑
勇みて近づく駆逐隊
見ゆるは確かに敵の鑑
幾度か我を照らせども
乗り込む第一駆逐隊
続いて朝汐霞号
何ぞ臆せん暁号
狙い定めて打出せば
目指す艦にぞ中りける
続いて赤き焔立つ
愉絶快絶万歳の
帰る第一駆逐隊
其の功績は我軍の


露 國 間 抜 艦 隊 軍 歌
其の壱
眠れや眠れ能く眠れ  我等の艦を抜出して
観劇酒宴に赴けば  知らぬ顔して眠るべし
もしも太守の問うたれば 知らぬ知らぬと答うべし
其の間に敵の不意撃ちで 其の侭ズボンと沈むべし
其の二
眠れや眠れ能く眠れ 今宵は殊に寒ければ
炬燵もドッサリ火を入れて 起きぬ積もりで眠るべし
もしも敵の水雷が  不意にズドンと撃込めば
逃げる覚悟で防衛して 其の侭ズボンと沈むべし
其の三
眠れや眠れ能く眠れ 古言に果報は寝て待てと
されば眠るは賢者なり 起きて働く奴は馬鹿
寝て待つ果報は今なるぞ 敵は不意に攻め寄せり
ドウセこうなりゃ是非もなし 其の侭ズボンと沈むべし
其の四
眠れや眠れ能く眠れ 沈むも知らず眠るべし
眠りて負ける者なれば 起きて負けるは同じ事
沈むは我等の義務なれど 眠るは我等の権利なり
彼是言う間に敵来たり 其の侭ズボンと沈むべし
其の五
眠れや眠れ能く眠れ 眠れる内は天国ぞ
元来我等の働くは  可愛い嬶の顔みたさ
其れも叶わぬ今の身は 何の楽しみあるべきや
嬉しい夢でも見てる間に 其の侭ズボンと沈むべし

浅 間 の 訣 別
時シモ二月十九日 嵐モ眠ルサ夜中ニ
軍艦浅間ノ総員ハ 上甲板ニ整列シ
死地ニ乗入ル五勇士 訣別ノ式ヲ挙ゲニケリ
此時八代艦長ハ 恩賜ノ杯取リ出シ
水酌ミカワシイヒケラク
今ワレ汝五勇士ヲ 萬死ノ船ニ送ランハ
死ノ口開ク魔ノ海ニ 愛児ヲ棄ツルニ異ラズ
サレドモワレハ百人ノ 子アラバ百人悉ク
斯カル壮挙ニ就カシメン ヨシヤ人ノ子ナリトモ
如何デ後レヲ取ラスベキ
嗚呼嗚呼汝五勇士ヨ モシモ左手ヲ失ナハバ
右手ノミニテ働ケヤ 又モシ両手ヲ失ナハバ
二ツノ足ニテ働ケヤ 両足共ニ失ナハバ
頭部ノミニテ働ケヤ 斯クテ命コレ従イテ
重キ任務ニ服スベシ
嗚呼嗚呼汝五勇士ヨ 死スルハ覚悟ノ上トデモ
決シテ死ヲバ軽ンズナ 死後ノ誉レニ狂ウナヨ
只唯一意天佑ヲ 確ク信ジテ疑ハズ
生死ヲ神ノ手ニマカセ 霊ノ御國ニ安ンジテ
斯ノ大任ヲ成シ遂ゲヨ 言葉終レバ一斉ニ
唱フル帝国万歳ノ  声ノドヨミノ勇マシサ
浪ヨリ浪ニ伝ワリテ 闇ニ消エユク軍楽ノ
離別ノ曲ノ凄マシヤ
マカロフ将軍ノ陣歿ハ広瀬中佐ノ葬送ノ日ナリトイヘバ
「汝もケフ海ニ沈メト皇軍ヲ まもる神ヤサソヒ往ニケム」
露國艦ベトロバーウロフスクノ沈没シテマカロウ将軍溺死セリトノ報ヲキキテ
「敵ノ艦ウチ沈メント聞キシヨリ 人ノ心ハうき立ちニケリ」
露艦沈没シ将卒皆溺セルヲ
「余所ニ見テ軍タスケヌ汝カ國ノ 神ハツレナキ心ナルラム」
二十日濱離宮ニテ観櫻ノ御宴セサセ給ウヨシホノカニ承リテ
「モノノフノ心ノ花ニヨソヘテヤ 御園ノサクラ見ソナハスラム」
「大君ノ御代ノ春風ノトケシト 花モ笑テヤ色ニミスラン」
広瀬中佐ノ名誉ノ戦死ヲ安田忠次
「モノノフノカタミトナリテアラ波ニ 心たかくも身はしつめけむ」
落 花
「大カタノ人ノココロニヲシマセテ ヲモヒナケニモチル櫻カナ」
広瀬中佐ノ英霊ヲヲロカミテ 七十二翁鎌垣章三郎
「君カタメヲモヒ入リニシ梓弓 大和心ヲツラヌキニケリ」
「敷島ノ大和心ヲ唐歌ニ ニホハセテチル山櫻カナ」
二月九日ノ夜旅順ニテヨメル
「初ノ夜ハまだ用意なく負けぬれバ 敵ハ何処ヲ突キ破ルラン」
「弾丸ノ音ヨ絶エナバ絶ネ長引ケバ ・・・・・・」

※画像をクリックすると拡大表示します



 
           
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
           

inserted by FC2 system